ダニエル・リカルドの紆余曲折。なぜレッドブル、ルノー、マクラーレンと移籍したのか当時の事情を関係者が紐解く

レッドブルが、リカルドが別の場所でレースをすることを望んでいなかったのは確かだ。彼の離脱によってレッドブルは今後数年間窮地に立たされ、その穴を埋めるためにピエール・ガスリー、そしてアレックス・アルボンを予定よりもかなり早く昇格させることを余儀なくされた。両者とも、リカルドならできていたような、フェルスタッペンのペースに匹敵するような走りをすることはできず、苦戦を強いられた。

当時、何がそうであったのか、そうでなかったのかはともかく、認識というものは簡単に形成され、揺らぐことは難しい。この時期、彼の頭脳が回転したことは間違いない。2018年8月の休みに入る前のドイツとハンガリーのレースで、リカルドはレッドブルが提示した契約延長に関する真剣な議論を全力でかわし、ルノーやマクラーレンと同様に、メルセデスやフェラーリが契約を提案してくるかどうかを待っていた。しかし、どちらからもなかった。ホーナーとレッドブルの経営陣は、彼がまだ契約書にサインしていないことにいら立ちながらも、100パーセントに近い自信を持って夏休みに臨んだ。

レース後、ブダペストでレッドブルのタイヤテストに参加したリカルドは、アメリカ行きの飛行機に乗り込んだ。その機内でルノーとの2年契約にサインし、1シーズン2,500万ドル(約32億円)という破格の報酬を手に入れたという。公の場では、2015年以降マクラーレンと苦戦していたレッドブルがホンダと提携することへの懸念を挙げるが、この間のリカルドの考え方をよく知る複数の関係者に長年話を聞いていると、フェルスタッペン問題が他のすべてを形作る大きな要因であったことは明らかであった。

その日のうちに、リカルドはホーナーに電話をかけてこのニュースを知らせた。ホーナーに本気であること、そして手の込んだ演出ではないことを納得させるのに時間がかかったため、電話は予定よりも長くなってしまった。ホーナーは自分が聞いたことを信じられず、今日に至るまでこの決定に困惑している。信頼性に欠け、パワー不足でタイトル争いの妨げになっているとレッドブルが感じているエンジンを製造している会社(ルノー)のレーシングチームに、自分のドライバーが参加することは、まったく意味不明なことだったのだ。マクラーレンのCEOであるザク・ブラウンもこのニュースに仰天し、自分のチームに入るかレッドブルにとどまるかの決断だと確信していた。複数のオファーがあることを知っていたほとんどの人は、フランス企業が契約を発表するまではルノーが真剣な競争相手だとは思っていなかったのだ。

この決断をめぐる混乱は、ホーナーよりもレッドブルの上層部にまで及んでいた。サマーブレイク前の数レース、ルノーとの契約にサインする前に、リカルドはレッドブルのオーナーであるディートリッヒ・マテシッツとチームのホスピタリティユニットのバルコニーで面会している。この会談で何が起こったかについては、根本的な見解の相違がある。レッドブルの言い分では、マテシッツはあらゆる面でフェルスタッペンとまったく同じ契約を提示し、えこひいきではないかとの指摘を一掃しようとしたという。レッドブルは、それが自分たちが提示した契約だと主張している。リカルド陣営は常にそれを否定している。もし、そのような条件が提示されていたなら、彼はその契約にサインしただろうと、複数の有力な情報筋がESPNに示唆している。

その会談でも、誤解が生じたようだ。歓談後、2人は握手を交わした。リカルドはマテシッツとの話し合いに感謝しつつも、気持ちが揺らぐことはなかった。マテシッツにとっては、この握手によって、リカルドがレッドブルに残留することが確定したようなものだった。  ラブライブ!コラボキャンペーン

ルノーに移籍したリカルド。3ページ目へ続く

コメント